仏壇はいらない?置かない家庭が増える理由と後悔しない考え方
「うちには仏壇はいらないかもしれない」と思いながら、どこか後ろめたさも残っていませんか。
2024年のアスカネットの調査では、自宅に仏壇がない人が約71%にのぼりました。
株式会社goennでCPOを務め、葬祭カウンセラーとしてご相談を受けている新原秀崇です。
先に結論をお伝えすると、仏壇は必ず置かなければならないものではありません。
ただし「仏壇がいらない」と「手を合わせる場所がいらない」は別の話で、ここを混ぜたまま決めると後悔が残りやすいと感じています。
今回は、置かない家庭が増えている背景、後悔しやすい場面、置かない場合の供養の選択肢、実家の仏壇をめぐる話し合いまでを順に解説します。
【この記事の結論】「仏壇はいらない」と決める前に知っておきたい4つのポイント
- 仏壇を置く法律上・宗教上の義務はない。「置かない」選択で責められる宗派も見当たらない
- 悩みの本質は「仏壇」ではなく「どこで手を合わせるか」。先に「誰が・どこで・何に手を合わせるか」の3つを決めれば後悔しにくい
- 仏壇がない家庭はすでに約7割(2024年調査)。マンション世帯では保有率2割前後で、置かないのは珍しい選択ではない
- 後悔しやすいのは「四十九日までに位牌の置き場所が決まらない」「家族に相談せず決めた」の2場面。本位牌の作成には約2週間かかる
- 仏壇の代わりは、棚に位牌と写真を置く(数千円)/ミニ仏壇(5万〜10万円)/位牌をお寺に預ける(3万〜50万円)など5つの選択肢がある

仏壇はいらないと決めても大丈夫。ただし「何も残さない」とは別の話
結論:仏壇を置く法律上・宗教上の義務はない
仏壇は法律上「祭祀財産(さいしざいさん)」、つまり仏壇や位牌、お墓など先祖を祀るための財産に分類され、預貯金などの相続財産とは別に扱われます。
民法897条は「誰が引き継ぐか」を定めた条文で、祀ることを義務づけてはいません。
宗教の面でも「置かなければ供養にならない」と定めた宗派は見当たりません。
浄土真宗では仏壇(お内仏)は故人の魂の居場所ではなく、本尊(その宗派で中心にお祀りする仏像や掛け軸)を安置する場と位置づけられています。
私はこれまで、仏壇を置かない選択をした方を責めたことは一度もありません。
「仏壇がいらない」と「手を合わせる場所がいらない」は別の問い
ご相談を受けていて感じるのは、多くの方が「仏壇という家具」に違和感を持っているだけだということです。
仏壇は、本尊や位牌を祀るための扉付きの祭壇のこと。
手を合わせる場所は、位牌・写真・遺骨など「向き合う対象」がある場所のこと。
後者は、棚の一角でも成り立ちます。
この2つを分けると、悩みの多くは「仏壇を買うか」ではなく「どこで手を合わせるか」の問題だと分かります。
故人に語りかける時間が日常に組み込まれるかどうかは、場所があるかないかで大きく変わると、ご相談を受けていて感じます。
後悔しない決め方の順番:「仏壇を買うか」より先に決める3つのこと
仏壇の要否を考える前に、次の3つを先に決めてみてください。
- 誰が手を合わせるのか(自分だけか、家族も、親も)
- どこで手を合わせるのか(自宅か、お墓や納骨堂か、実家か)
- 何に手を合わせるのか(位牌、遺骨、写真、本尊)
この3つが決まれば、仏壇の大きさや、そもそも置くかどうかは自然に決まります。
仏壇を置かない家庭が増えている理由。データで見る「仏壇離れ」の実態
自宅に仏壇がある家庭は3〜4割。マンションでは2割前後
複数の調査を並べると、自宅に仏壇がある人や家庭はおおよそ3〜4割で、20〜50代だけを対象にした調査では3割を切ります。
| 調査 | 実施時期・対象 | 結果 |
|---|---|---|
| アスカネット | 2024年9月、20〜59歳2,409名 | 仏壇がない 約71.2% |
| RIYAK(鵬盛商事) | 2019年10月、全国1,000名 | 仏壇がある 41.2% |
| いのりオーケストラ | 2012年頃と推定、30〜60代の2人以上世帯600名 | 仏壇がある 39.2% |
いのりオーケストラの調査を住まい別に見ると、一戸建て持ち家では51.8%、マンション持ち家では21.1%でした。
10年ほど前の調査で対象も他と違うため単純比較はできませんが、住まいの形と保有率に関係があることは読み取れます。
理由1:置く場所がない。住まいが「仏間のない家」に変わった
アスカネットの調査で仏壇を持たない理由を聞くと、「スペースがない」が17.6%でした。
和室や仏間(仏壇を置くための和室やスペース)のない間取りが増え、大きな仏壇を置く前提の住まいが少なくなっています。
理由2:「今は必要ない」「継ぐ人がいない」。家族の形が変わった
同じ調査で最も多かった理由は「今特に必要としていない」で34.4%です。
厚生労働省の2024年国民生活基礎調査では平均世帯人員が2.20人と過去最低になり、全日本宗教用具協同組合が2024年に行った調査でも、購入予定がない理由に「子供がいないので永年にわたって保持し続けられない」が挙がっていました。
継ぐ人がいないから置かないというのは合理的な判断で、責められることではありません。
理由3:宗教観・ライフスタイルの変化と、手入れの負担
アスカネットの調査では、20〜40代ほど「現代の生活に馴染まない」と答える人が増える傾向が見られました。
毎日の水や花の交換も、共働き世帯には負担です。
ただ、結論を急ぐ前に、置かなかった人がどこで後悔しているかを見ておきましょう。
仏壇を置かないと後悔するのはどんなとき?よくある3つの後悔
後悔1:四十九日を前に、位牌と遺骨の「置き場所」に困った
葬儀のあと、遺骨と白木の位牌(葬儀用の仮の位牌)は仮の「後飾り祭壇」に安置し、四十九日法要で本位牌(漆塗りなどの正式な位牌)に切り替えて後飾りを片付けるのが一般的な流れです。
「仏壇は買わない」と決めたものの、本位牌と遺骨を「どこに置くか」までは決めていなかった、という方が少なくありません。
四十九日を迎えて床に直置きしてしまい、あとで悔やんだという声を何度も聞いてきました。
本位牌の作成には2週間ほどかかるので、置き場所も同じタイミングで考えておきたいところです。
後悔2:ふと手を合わせたいときに、向かう場所がなかった
いのりオーケストラの調査では、自分の供養を「どちらかと言えば不足」「かなり不足」と感じる人を合わせると、仏壇がある人で37.0%、ない人で51.3%でした。
仏壇があれば満足できるという単純な話ではありませんが、向き合う場所がある人のほうが不足感を持ちにくい傾向は見てとれます。
命日の朝、嫌なことがあった夜、子どもに「おじいちゃんはどこにいるの」と聞かれたとき。
お墓が遠いと、その場ですぐには手を合わせられません。
「母の写真の前に花を置く場所だけは欲しくなった」というご相談は、実はとても多いのです。
後悔3:家族や親と話さずに決めて、関係がこじれた
もう一つ多いのが、家族と話す前に「置かない」と決めてしまい、関係がこじれるケースです。
親世代にとって仏壇は、自分が守ってきた日々そのものです。
「ご先祖様を粗末にできない」「罰が当たる気がする」という言葉の裏には、否定された気持ちが隠れています。
仏壇を置かない場合の供養方法。「手を合わせる場所」を小さくつくる5つの選択肢
選択肢1:位牌と写真だけを棚の上に安置する
仏壇がなくても、位牌は祀れます。
腰の高さ以上の棚やチェストに布を敷き、風通しのよい場所に安置します。
玄関や水回り、直射日光の当たる場所は避けてください。
おりん、線香立て、花立て、湯呑があれば十分で、揃えても数千円程度です。
菩提寺(先祖代々のお墓があり、法要をお願いしているお寺)がある方は、本尊なしでよいか一度相談しておくと安心です。
選択肢2:ミニ仏壇・ステージ型の供養スペース
棚の上に置ける上置き型や壁掛け型のミニ仏壇、位牌と写真と花を並べる「ステージ」形式も増えています。
はせがわのコンパクト仏壇は税込33,000円からあり、相場は5万〜10万円ほどが中心ですが、デザイン性の高いセットでは20万円を超えるものもあります。
本尊も祀りたい方や、来客時に目立たせたくない方に向いています。
選択肢3:手元供養(ミニ骨壺・遺骨ペンダント)
遺骨の一部または全部を自宅で保管する方法です。
高さ6cmほどのミニ骨壺や、遺骨を納めるペンダントがあります。
注意したいのは自分が亡くなったあとの遺骨の行き先で、いつか納骨や散骨をする道を家族で決めておきましょう。
納骨先をゆっくり決めたい方には、当社goennが運営するTaguru(タグル)の預骨サービスのように、遺骨を一時的に預かってもらう選択肢もあります。
遺骨を送る「おくるだけ」と、スタッフが自宅まで伺う「おむかえ」の2プランから選べます。
選択肢4:位牌をお寺に預ける(位牌の永代供養)
位牌堂(位牌を安置して供養するための建物)を持つお寺に位牌を預け、お寺が供養を続ける方法で、継ぐ人がいない方に選ばれています。
費用は3万〜50万円と幅があり、期間や供養の内容で変わります。
「永代」といっても一定期間のあとにお焚き上げ(供養したうえで焼却すること)されるのが一般的なので、契約内容は確認してください。
選択肢5:お墓・納骨堂・実家の仏壇を「手を合わせる場所」にする
自宅には置かず、お墓や納骨堂、実家の仏壇を拠点にする考え方です。
全日本宗教用具協同組合の調査でも、仏壇を買っておらず購入予定もない人のうち45.4%は、実家や兄弟の家に仏壇がありました。
仏壇そのものの意味を知りたい方は、仏壇とは?何のために家に置くのかの記事も参考になります。
実家の仏壇を「いらない」と感じたとき。親・家族と後悔なく話し合う進め方
仏壇は「祭祀財産」。長男が継ぐ決まりはなく、引き継いだ人が処分もできる
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。(民法第897条第1項)
東京弁護士会の解説によると、承継者は「亡くなった方の指定」があればその人、なければ慣習、それも明らかでなければ家庭裁判所が決めます。
長男が継がなければならない決まりはありません。
民法の解説書でも、承継した人に祭祀を続ける法律上の義務はないとされています。
仏壇を小さくする、位牌だけ引き継ぐ、供養して手放す、いずれも法律上は自由です。
ただし法律上自由であることと、親族の理解を得ることは別の話です。
条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。
親が反対する本音を先に受け止める
法律で自由だと分かっても、親の気持ちは別で、まず「反対されるのが当たり前」と知っておくと話し合いが楽になります。
言葉も「処分する」ではなく「供養して見送る」「小さくして引き継ぐ」に変えてみてください。
供養を行ったことを示す供養証明書を発行するお寺や業者を選ぶと、安心してもらえることが多いです。
1回で決めず、複数の選択肢を並べて一緒に選ぶ姿勢が、結局は近道になります。
「処分」ではなく「供養して見送る」。仏壇じまいの流れと費用の目安
仏壇を手放す場合は、菩提寺に相談し、閉眼供養(魂抜き)をしてから本体を引き取ってもらう流れが基本です。
浄土真宗は仏壇や位牌に魂が宿るという考え方をしないため、閉眼供養ではなく、本尊を別の場所へお移しする「遷座法要(せんざほうよう)」や「遷仏法要」を行います。
| 方法 | 費用の目安 |
|---|---|
| 菩提寺に供養から処分まで依頼 | 1万〜10万円(お気持ちの場合も) |
| 仏壇店に引き取りを依頼 | 2万〜8万円(買い替え時は割引あり) |
| 不用品回収業者 | 1万〜5万円(供養は別途) |
| 自治体の粗大ごみ | 500〜3,000円(供養は別途) |
閉眼供養のお布施は1万〜5万円程度を目安とする解説が多いですが、寺院によって違います。
引き出しに通帳や印鑑などの貴重品や、過去帳(故人の名前や命日を記した帳面)が残っていることがあるので、処分前に必ず中を確認してください。
判断の軸は「誰が・どこで・どう手を合わせるか」。新原からの提案
実家の仏壇の行き先は、次の5つのどこかに落ち着きます。
- そのまま継ぐ
- 小さな仏壇に替えて継ぐ
- 位牌だけを引き継ぐ
- 位牌をお寺に預ける
- 供養して見送る
どれを選んでも、供養として成り立ちます。
これだけは断言できます。
仏壇の大きさと故人を想う気持ちの大きさは比例しません。
よくある質問(FAQ)
Q. 仏壇がなくても法事やお盆の供養はできますか?
できます。
法事はお寺や法要会館で営めますし、自宅なら位牌や写真を置いた場所で行えます。
Q. 位牌だけを置いて仏壇を置かないのは失礼になりませんか?
失礼にはなりません。
直置きを避け、腰の高さ以上の棚に布を敷いて安置し、おりんや線香立てを添えれば整います。
Q. 浄土真宗は「仏壇はいらない」と聞きましたが本当ですか?
半分は誤解です。
浄土真宗では亡くなった人はすぐに浄土へ往生すると考えるため、位牌を用いず、過去帳や法名軸(法名を記した掛け軸)に名前を記します。
一方で仏壇は本尊を安置する「家庭の中のお寺」として大切にされています。
真宗大谷派(東本願寺)の公式サイトは「一人暮らしだから必要ない」と思われている方がいると前置きしたうえで、お内仏を「一人ひとりの心の依りどころとなる大切なもの」と説明しています。
Q. 一人暮らしや子どもがいない場合、仏壇は買わないほうがいいですか?
「継ぐ人がいないから買わない」は合理的な判断です。
ただ、手を合わせる場所は欲しくなることが多いので、自分の代で完結できる形を選んでおくと安心です。
Q. 仏壇を置かず、写真だけ飾って手を合わせるのはありですか?
ありです。
私は、宗教的な形式よりも向き合う場所があることのほうが大切だと考えています。
ただし浄土真宗など、仏壇の中に写真を入れることを勧めない宗派もあるので、仏壇と併用する場合は写真を外に置いてください。
Q. 仏壇を置かないと、お寺(菩提寺)との関係に影響しますか?
仏壇の有無が檀家(特定のお寺に所属し、お布施などで支える家)としての関係を左右することは、基本的にありません。
「仏壇は置かないが供養は続けたい」と正直に伝えてください。
Q. 実家の仏壇を処分すると罰が当たりますか?
少なくとも主要な宗派の教えに、仏壇を処分したこと自体で罰が当たるという考えは見当たりません。
閉眼供養や遷座法要をして引き取ってもらえば、供養として見送る形になります。
罪悪感が残りやすいので、家族全員が納得してから進め、位牌や写真など手を合わせる対象を一つ残すことをおすすめします。
まとめ
仏壇は、置かなければならないものではありません。
置かない家庭が増えているのは、住まいと家族の形が変わった自然な結果です。
ただし「仏壇がいらない」と「手を合わせる場所がいらない」は別の話です。
後悔が生まれやすいのは、四十九日前の置き場所、ふと手を合わせたい瞬間、家族と話さずに決めたときです。
「誰が・どこで・どう手を合わせるか」を先に決めれば、棚の一角でも、お寺に預ける形でも、供養は成り立ちます。
まずはご家族と「どこで手を合わせたいか」を一度話してみてください。
その会話そのものが、故人を想う時間になると私は思っています。
関連する記事
買う とどける
様々なサービスを購入する

Comment
また、日本葬祭アカデミー教務研修室にて「葬祭カウンセラー」資格を取得し、エンディング領域における専門性を活かした取り組みを進めている。
関連記事一覧を見る