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精霊馬とは?きゅうり・なすの意味と地域で違うお盆のお迎え

2026.08.12
2026.08.12

お盆の時期、きゅうりやなすに割り箸を刺した飾りを見て、「あれは何のためにあるのだろう」と思ったことはありませんか?

こんにちは。株式会社goennでCPOを務めております、葬祭カウンセラーの新原秀崇です。
あの飾りは「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれ、お盆に帰ってくるご先祖様の乗り物に見立てたものです。

ただし、精霊馬は全国で同じように飾るものではありません。
使う材料や飾る時期、向きは地域や家庭によって異なります。
山形県遊佐町の一部には、おもちゃの車を軒先に吊るしてご先祖様を迎える風習も残っています。

この記事では、精霊馬の意味と作り方、飾り方、地域ごとに異なるお盆の迎え方を紹介します。

【この記事の結論】精霊馬の意味・飾り方・処分方法がわかる5つのポイント

  • 「きゅうりの馬」には早く帰ってきてほしい、「なすの牛」にはお供え物を載せてゆっくり戻ってほしいという願いが込められています。
  • 作るときは「きゅうり1本・なす1本・割り箸2膳」または爪楊枝8本を用意し、それぞれに4本の足を刺します。
  • 飾る時期は「7月盆または8月盆の13日から16日」が目安ですが、向きに全国共通の決まりはありません。
  • 地域や宗派によって迎え方は異なり、「浄土真宗」のように精霊馬を基本的に飾らない宗派もあります。
  • 数日間飾った野菜は食べず、野菜と割り箸を分けて「自治体の分別ルール」に従い処分するのが安全です。
精霊馬とは
精霊馬の材料や向きには全国共通の決まりがありません。地域や家庭によって異なるため、迷ったときは親族や菩提寺に確認しましょう。

精霊馬とは?きゅうりの馬となすの牛に込められた意味

きゅうりは馬、なすは牛。行きは速く、帰りはゆっくり

精霊馬とは、お盆にご先祖様があの世とこの世を行き来する際の乗り物に見立てた盆飾りです。

きゅうりで作る馬を「精霊馬」、なすで作る牛を「精霊牛(しょうりょううし)」と呼びます。
二つをまとめて精霊馬や牛馬と呼ぶこともあります。

広く知られているのは、きゅうりの馬には「足の速い馬に乗って、早く帰ってきてほしい」、なすの牛には「帰りはゆっくりと、お供え物を載せて戻ってほしい」という願いを託す説明です。
国立国会図書館も、迎え盆にはきゅうりの馬、送り盆にはなすの牛を飾るという考え方を紹介しています。

行きは速く、帰りはゆっくり。
ご先祖様と少しでも長く過ごしたいという気持ちが表れた風習です。
ただし、飾り方や意味の伝え方は地域や家庭によって異なります。

なぜ夏野菜のきゅうりとなすを使うのか

きゅうりとなすを使う理由は、はっきりとは分かっていません。
農林水産省東海農政局は諸説あるとしたうえで、どちらも夏を代表する野菜であることが大きな要因と紹介しています。

細長いきゅうりは馬に、丸みのあるなすは牛に見立てやすい形です。
地域によっては、わらやマコモなどで牛馬を作る例もあります。
きゅうりとなすだけが唯一の材料というわけではありません。

精霊馬の作り方と飾り方。向きと置き場所も解説

用意するものと基本の作り方

一般的な材料は次のとおりです。

  • きゅうり 1本
  • なす 1本
  • 割り箸 2膳、または爪楊枝8本

割り箸を割って半分に折り、足に見立てて、きゅうりとなすに4本ずつ刺します。
4本の足を少し外側へ開くように刺すと、立たせやすくなります。

割り箸を折った部分や爪楊枝の先は鋭くなります。
お子さんと作る場合は、大人がそばで見守ってください。
「なぜ馬と牛なのか」を一緒に話す時間も、ご先祖様を思うひとときになります。

飾る期間はいつからいつまで?

お盆を7月に行う地域と8月に行う地域では、精霊馬を飾る時期も変わります。
一般的な目安は、7月盆または8月盆の13日から16日までです。
旧暦に合わせてお盆を行う地域もあります。

なお、「新盆(にいぼん・あらぼん)」は、故人が亡くなって四十九日を過ぎた後、初めて迎えるお盆を指す場合が多い言葉です。
7月のお盆と混同しやすいため、この記事では「7月盆」と表記します。

生の野菜は傷みやすいので、盆入りの前日か当日に作ると扱いやすくなります。
飾る日数も地域や家庭で異なるため、ご実家や菩提寺の習慣を確かめておくと安心です。

向きに全国共通の決まりはない

精霊馬の向きには、全国共通の決まりが確認できません。
一般向けの仏事資料では、次のような置き方が紹介されています。

  • 迎え盆は家の内側へ向け、送り盆は外側へ向ける
  • きゅうりの馬を仏壇側、なすの牛を玄関側へ向けたままにする

置き場所は、仏壇の前に設ける盆棚や台の上が一般的です。
方角まで含めて一つの置き方を「正解」と決めず、親族や菩提寺に聞くのが確実です。

精霊馬は全国共通ではない。地域で違うお盆のお迎え

東日本と西日本だけでは分けきれない

精霊馬になじみのある地域もあれば、ほとんど作らない地域もあります。
盆行事は同じ都道府県内でも差があり、東日本と西日本の二つだけに分けると実態を単純化しすぎます。

例えば、長崎市の「精霊流し」は、盆前に亡くなった方の遺族が、手作りした精霊船を曳いて街を進み、故人を極楽浄土へ送り出す8月15日の行事です。
現在の長崎市では、船をそのまま川や海へ流すのではなく、市が設ける流し場で受け付けています。

沖縄の旧盆では、サトウキビを仏壇の両脇などに供える風習があります。
長いサトウキビは、ご先祖様が帰る際の杖や、お供え物を運ぶ担ぎ棒に見立てられます。
本土の精霊馬と同じ乗り物ではなく、別の役割を持つお供えです。

地域・宗派お盆の迎え方・送り方の例
きゅうり・なすを使う家庭馬と牛に見立てた精霊馬・精霊牛を飾る
長崎市精霊船を曳いて故人を送り出す精霊流し
沖縄の一部杖や担ぎ棒に見立てたサトウキビを供える
山形県遊佐町の一部おもちゃの車などを軒先に吊るす
浄土真宗精霊棚や精霊馬を基本的に設けない

結婚や転勤で暮らす地域が変わり、「義実家では精霊馬を作らないので戸惑った」というご相談を受けることがあります。
どちらかが間違っているのではありません。盆行事は地域、宗派、家庭の習慣が重なって受け継がれています。

浄土真宗では精霊馬を基本的に飾らない

宗派による違いもあります。
浄土真宗本願寺派の公式案内では、亡くなった方は阿弥陀仏の救いによってすでに浄土に生まれ、仏さまになっていると説かれています。
お盆の時期だけ霊が帰るという考え方を取らないため、精霊棚や精霊馬は基本的に設けません。

お盆そのものを行わないわけではなく、先立った方を偲び、仏法を聞く機会として盂蘭盆会(うらぼんえ)が営まれます。
「歓喜会(かんぎえ)」と呼ばれることもあります。

同じ宗派でも、地域や寺院によって案内が異なる場合があります。
ご家庭の飾り方に迷ったら、菩提寺へ確認してください。

おもちゃの車でお迎えする地域も。山形県遊佐町の「精霊車」

ミニカーを軒先に吊るす風習と由来

山形県遊佐町の一部には、精霊馬の代わりにミニカーなどを軒先へ吊るす風習があります。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、山形県立図書館が調べた事例として収録されています。

同データベースが引用する2017年8月14日付の山形新聞によると、始まりは昭和40年代ごろです。
精霊馬の材料にしていたマコモが不足し、「ご先祖様の帰ってくる足がない」と、代わりにミニカーを吊り下げたと伝えられています。

その後の報道では、車だけでなく、飛行機やバスなどを吊るす家庭も紹介されています。
ご先祖様の乗り物を、その時代の暮らしに合わせて選んだ民俗事例です。

創作精霊馬は家族や菩提寺と相談して楽しむ

近年は、車やバイクをかたどった創作精霊馬の写真がSNSへ投稿されています。
2022年8月13日には、本田技研工業の公式アカウントが、きゅうりで作ったシビックとなすで作ったスーパーカブの写真を投稿しました。

関連リンク: お盆最速?ホンダ作の「キュウリ シビック」、「ナス スーパーカブ」が話題に!

野菜を加工した創作精霊馬を、すべての家庭や宗派で受け入れられるとは限りません。
それでも、ご先祖様を思い、ご家族も納得して作るのであれば、現代ならではの迎え方の一つになり得ると私は思います。

周囲と考え方が分かれそうなときは、先にご家族や菩提寺へ相談しておきましょう。
形を工夫することと、受け継がれてきた習慣を尊重することは両立できます。

役目を終えた精霊馬の処分方法。食べないほうがよい理由も

自治体の分別ルールに従って処分する

お盆が終わった精霊馬は、自治体の分別ルールに従って処分するのが基本です。
野菜と割り箸を分ける必要がある地域では、それぞれ指定された区分で出してください。

ごみとして出すことに抵抗があれば、白い紙に包んでから処分しても構いません。
塩で清める方法も紹介されていますが、必須の作法ではありません。

寺院へ納めたい場合は、持ち込みやお焚き上げを受け付けているか、事前に確認が必要です。
家庭の送り火で精霊馬を燃やすと、火災や煙、地域の火気使用ルールに触れるおそれがあります。
自己判断では燃やさないでください。

かつては川や海に流す地域もありましたが、現在は河川環境や廃棄物処理の面から、流さないよう求める自治体が増えています。
地域にお供え物の臨時集積所がある場合は、自治体の案内に従いましょう。

数日間飾った野菜は食べない

精霊馬に使ったきゅうりやなすを食べてはいけないという、全国共通の宗教上の決まりは確認できません。
ただ、割り箸や爪楊枝を刺し、夏場に数日間、常温で飾った野菜は衛生状態を判断できません。

農林水産省は、食中毒予防のため、食品を室温に放置せず適切な温度で保管するよう案内しています。
数日間飾った精霊馬は食べずに処分するのが安全です。

もったいないと感じる場合は、布や木、ガラスなどで作られた繰り返し使える精霊馬を選ぶ方法もあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 精霊馬はいつからいつまで飾りますか?

7月盆または8月盆の13日から16日までが一つの目安です。
旧暦でお盆を行う地域や、飾る日を限定する家庭もあります。地域と菩提寺の習慣を優先してください。

Q. きゅうりが馬で、なすが牛なのはなぜですか?

細長いきゅうりを馬に、丸みのあるなすを牛に見立てます。
足の速い馬で早く帰ってきてもらい、帰りは牛にお供え物を載せてゆっくり戻ってもらうという説明が広く知られています。

Q. 精霊馬の向きに決まりはありますか?

全国共通の決まりはありません。
迎え盆は家の内側、送り盆は外側へ向ける方法や、きゅうりを仏壇側、なすを玄関側へ向けたままにする方法があります。

Q. マンションやアパートでも精霊馬を飾れますか?

室内の仏壇前や棚の上に飾れます。
共有廊下や玄関外へ置くと、管理規約や衛生上の問題が生じることがあるため、室内が安心です。

Q. 精霊馬を飾らない地域や宗派はありますか?

精霊馬になじみの薄い地域があります。
浄土真宗では、お盆の時期だけ霊が帰るとは考えないため、精霊棚や精霊馬を基本的に設けません。

Q. お盆が終わった精霊馬は食べてもいいですか?

宗教上の一律の禁止というより、衛生面から避けるのが安全です。
割り箸を刺し、夏場に数日間常温で飾った野菜は食べず、自治体の分別ルールに従って処分してください。

Q. おもちゃの車を精霊馬の代わりにしてもいいのでしょうか?

山形県遊佐町の一部には、実際にミニカーなどを軒先へ吊るす風習があります。
ただし、その地域の事例をどの家庭にもそのまま当てはめることはできません。
ご家族や菩提寺と相談し、皆が納得できる形を選びましょう。

まとめ

精霊馬は、きゅうりを馬、なすを牛に見立てた盆飾りです。
早く帰ってきてほしい、帰りはゆっくり戻ってほしい。
そんなご先祖様への思いが込められています。

一方で、材料、向き、飾る期間は全国一律ではありません。
精霊船で送る地域、サトウキビを供える地域、おもちゃの車を吊るす地域もあります。
宗派によっては精霊馬を設けません。

今年のお盆に精霊馬を作るなら、ご家族の記憶や菩提寺の習慣も聞いてみてください。
作り方だけでなく、その家で受け継いできた思いまで次の世代へ伝えられます。

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