病院で紹介された葬儀社、その場で決めなくていい。搬送だけ頼むという選択

2026.11.05
2026.11.05
病院の廊下のベンチで、スマートフォンとメモ帳を手に考える女性

病院で家族を看取った直後、看護師さんから「葬儀社はお決まりですか」と聞かれることがあります。
決まっていないと答えると、病院と付き合いのある葬儀社を紹介され、そのまま葬儀まで頼む流れになりがちです。

株式会社goennで、お墓や納骨の相談を受けながら、寺院や葬儀社とやり取りしている𫝆橋計貴(いまはし かずき)です。
紹介された葬儀社に、その場で葬儀まで決める必要はありません。
この記事では、搬送だけを頼むときの伝え方と、地元から遠い病院で亡くなったときの考え方をお話しします。

【この記事の結論】病院で紹介された葬儀社との付き合い方がわかる5つのポイント

  • 病院の紹介先には搬送だけを頼み、葬儀は別の葬儀社に頼めます。
  • 運んでもらうと断りにくくなるので、最初に「葬儀は未定」と伝えます。
  • 頼む前に安置先と費用を聞きます。搬送は近距離なら5万円前後が目安です。
  • 菩提寺がある家は、葬儀社より先にお寺へ一報し、宗派を伝えます。
  • 遠方で亡くなったら、お別れと火葬を済ませ、遺骨を連れ帰る形もあります。

病院で紹介された葬儀社は断れる?搬送だけ頼んで、葬儀は別の葬儀社にできる

病院で亡くなると、すぐに葬儀社を聞かれる理由

厚生労働省の人口動態統計によると、2025年に亡くなった方の64.1%は病院で亡くなっています。
病院の霊安室は一時的な場所で、数時間のうちに搬送を促されるのが一般的だといわれます。
墓地埋葬法で原則として死後24時間は火葬できないため、それまでどこかに安置する必要もあります。

病院にも事情があります。
亡くなった方のベッドを空けないと、次の患者さんが入れません。
これから亡くなる方は増えていくので、少しでも早く送り出したいのが病院の本音だと私は思います。

「搬送」と「葬儀」は別々に頼んでいい

病院から安置場所まで運ぶ「搬送」と、お通夜や告別式を含む「葬儀」は、別々の葬儀社に頼めます。
1級葬祭ディレクターの赤城啓昭さんは、正式に依頼していなければ、搬送のあとでも葬儀社は替えられると解説しています(マネーポストWEB)。
その場合も、搬送や安置の費用は支払います。

紹介された葬儀社が悪いわけではありません。
紹介先の葬儀社が、あとから頼んだ地元の葬儀社へ丁寧に引き継いでくれた例もあります。
後悔につながりやすいのは、比べないまま全部を決めてしまうことです。

病院で紹介された葬儀社にその場で決めると、困りやすいこと

病院が地元から遠いと、葬儀の場所も遠くなる

亡くなった病院と、葬儀をしたい場所は、一致しないことが多いものです。
緩和ケアの病棟やがんセンターは地元から離れていることがあり、そこで紹介される葬儀社が地元の葬儀社とは限りません。
どこに頼むかは、自分たちで調べて確かめることが大事です。
私の見ている範囲では、Googleマップなどで地元の葬儀社を探す方がとても多いです。

運んでもらったあとで、断りにくくなる

国民生活センターによると、全国の消費生活センター等には、葬儀サービスの相談が年に900件前後寄せられています。
2026年6月に公表された資料に、こんな事例があります。

母親を亡くした方が、「病院から遺体を引き取ってほしいとせかされた」こともあり、一日葬が約30万円と聞いていた葬儀社に依頼しました。
翌日に出された見積もりは80万円以上でした。
キャンセルも考えましたが、遺体を引き取ってもらったのでどうしようもないと思い直し、約80万円で契約しています。

もう運んでもらったのだから、と思ってしまう気持ちはよく分かります。
だからこそ、運んでもらう前の一言が大切です。

菩提寺がある家は、僧侶の手配でこじれることがある

菩提寺(先祖代々のお墓があり、葬儀や法要をお願いしているお寺)がある家は、もう一つ注意が必要です。
勧められるままに、枕経(亡くなった直後や安置のときに唱えてもらう短いお経)を別のお坊さんに頼んだために、菩提寺からうちではもう見られないと言われてしまうことがあるのです。
呼び方は宗派によって違います。
自分のお寺で葬儀をしていないなら、お墓には納められないというお寺もあります。

宗派の違うお坊さんに戒名を付けてもらうと、あとで菩提寺への納骨を断られかねない、という指摘もあります(マネーポストWEB)。
菩提寺とのつながりを大事にしたい方は、ここを必ず確かめてください。

搬送だけ頼むときの伝え方と、その場で確認すること

最初に「葬儀の依頼はまだ決めていない」と伝える

赤城さんは、搬送を頼むときに「まだ葬儀の依頼までは決定していない」ことを明確にしておくのがポイントだと書いています。
言い方に迷ったら、次のように伝えてみてください。

  • 「搬送と安置だけお願いします。葬儀をどこに頼むかは、家族で相談して決めます」
  • 「安置するところまでで、費用はいくらになりますか」
  • 「申込書へのサインは、家族と相談してからにします」

預けた死亡診断書は、役所への提出前なら、別の葬儀社に頼む際に返してもらえます。

安置する場所と、搬送の費用を確かめる

安置する場所は、自宅のほか、葬儀社の安置室や斎場の霊安室などがあります。
安置室を使うと安置料がかかり、ドライアイス代も火葬までの日数に応じて増えることが多いです。
搬送の費用は、よほど遠くなければ車両代とドライアイス、シーツ代を合わせて5万円前後が目安だと赤城さんは説明しています。
地域や距離、深夜かどうかでも変わるので、頼む前に聞いておきましょう。

確認すること聞いておく理由
どこに安置するか自宅か安置室かで、費用と面会のしやすさが変わる
搬送と安置の料金あとから高い搬送料を求められるのを防ぐ
ドライアイスは1日いくらか火葬まで日数があると積み重なる
葬儀を別の葬儀社にしたら何を払うか替えるときの精算を先に知っておく

火葬までの日数と費用は、年末年始に家族が亡くなったときの記事でも詳しくお話ししています。

菩提寺があるなら、葬儀社より先に一報する

どの宗教で送ってもらうのか、菩提寺があるならその宗旨宗派くらいは把握しておくと、ここがうまくいきます。
亡くなったら、葬儀社を決める前に菩提寺へ一報を入れてください。
私が聞いている範囲では、一報するだけで、比較的遠くても来てくださるご住職もいます。
葬儀社には、最初に「菩提寺があります。宗派は〇〇です」と伝えておきましょう。

地元から遠い病院で亡くなったら。お別れと葬儀を分けて、遺骨を連れて帰る選択

お別れ会と葬儀は、別のもの

親戚が集まってお別れをする場が、そのまま葬儀というわけではありません。
お別れ会は、宗教儀礼のないお別れの場です。
葬儀は、お経などの宗教儀礼を伴う送り出しです。
この2つを分けて考えれば、自分たちに合った送り方が見えてきます。

近くでお別れと火葬を済ませ、菩提寺で葬儀をする

遠くに菩提寺がある場合、私たちgoennがよくおすすめしているのが、次の形です。

  • 亡くなった土地で、お別れ会だけを開く(宗教者は呼ばない)
  • 火葬して、遺骨にする
  • 遺骨を連れて帰り、菩提寺のご住職のもとで改めて葬儀をする

私の祖母のときも、遺骨を地元へ連れて帰りました。
宇和島のお墓には祖父も入っていて、宇和島が大好きだった祖母を、どうしてもそこに入れてあげたかったからです。
遺骨はすべて持ち帰りました。

家族が離れて暮らすことの多い今、地元から遠い病院で亡くなるのは珍しいことではありません。
お別れと葬儀を分ける形を頭に入れておくと、慌てずにすみます。

火葬が終わると、火葬許可証に火葬済みの印が押されます。
お墓に納めるときに必要な書類で、骨壺と一緒に箱へ納めてくれることが多いようです(大田区の案内)。

亡くなる前に、少しだけ調べておく

亡くなることがある程度分かっているなら、前もって調べておくのは悪いことではありません。
つらい時期ですが、早めに考えておいたほうがいいと私は思います。
国民生活センターも、前もって情報を集め、葬儀社に事前相談しておくことを勧めています。

  • 地元の葬儀社を1〜2社、連絡先と一緒にメモしておく
  • 菩提寺の名前、連絡先、宗派を確かめておく
  • 葬儀をどこでしたいか、お墓はどこかを家族で話しておく

家族との話の切り出し方は、お正月に親とお墓の話をする記事も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 病院が紹介した葬儀社に搬送を頼んだら、葬儀もそこに頼まなければいけませんか?

正式に依頼していなければ、葬儀は別の葬儀社に頼めます。
搬送と安置にかかった費用は支払います。

Q. 搬送だけ頼むと、費用はいくらくらいかかりますか?

近い距離なら5万円前後がひとつの目安とされています。
距離や時間帯、安置の日数で変わるので、頼む前に金額を聞いておきましょう。

Q. 搬送のあとで葬儀社を替えるとき、ご遺体はどうなりますか?

新しく頼む葬儀社に、安置している場所まで迎えに来てもらう形になります。
火葬場の予約がすでに入っていても、担当の葬儀社を変更する手続きで対応できることがあります。

まとめ

病院で紹介された葬儀社に、その場で葬儀まで決める必要はありません。
搬送だけを頼み、安置先と費用を確かめれば、家族で落ち着いて選ぶ時間がつくれます。
菩提寺がある家は、葬儀社より先にお寺へ一報してください。

地元から遠い病院で亡くなったときは、お別れと葬儀を分けて、遺骨を連れて帰るという送り方もあります。
私の祖母も、そうして大好きだった宇和島のお墓に帰りました。
送り方の選択肢は、思っているより多いですよ。

困ったときは、消費者ホットライン「188」で近くの消費生活センターを案内してもらえます。
お墓や納骨先を探すときは、goennのお墓探しで地域と種類から比べられます。

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