お墓の基礎情報
お墓を高圧洗浄機で洗ってもいい?墓石を傷めない正しい掃除方法
お盆を前に、久しぶりのお墓掃除。
「家のケルヒャーを持って行けば、こびりついたコケも一気に落とせるのでは」と考えたことはありませんか?
外壁やベランダ掃除であの威力を体感していれば、自然な発想だと思います。
こんにちは。
株式会社goennでCPOを務めております、葬祭カウンセラーの新原秀崇です。
結論からお伝えすると、家庭用高圧洗浄機でのお墓掃除はおすすめできません。
この記事では、その理由と、墓石を傷めにくい掃除方法を解説します。
【この記事の結論】お墓の高圧洗浄と正しい掃除方法の5つのポイント
- 家庭用高圧洗浄機は「弱」設定でも安全とは限らないため、墓石への使用は避けるのが無難です。
- 約7メガパスカルの圧力が出る機種もあり、墓石の艶・彫刻文字・目地を傷めるおそれがあります。
- 普段の掃除は、水と柔らかいスポンジを使い、墓石の上から下へ優しく洗って乾拭きします。
- 金属製たわし、硬いブラシ、メラミンスポンジ、家庭用洗剤は、傷や変色の原因になるため使いません。
- 水垢・コケ・シミが落ちない場合は無理に削らず、石材店やお墓クリーニング業者へ相談してください。

お墓を高圧洗浄機で洗うのはおすすめできません
結論:家庭用高圧洗浄機での墓石掃除は避けるのが無難
高圧洗浄機の使用を全国一律で禁じる法律は確認できません。
ただし、霊園や寺院によっては、機器の持ち込みや電源・水道の使用に独自のルールを設けています。
持ち込む前に、管理事務所や住職へ確認してください。
そのうえで私は、家庭用の高圧洗浄機(ケルヒャーはその代表的な商品名です)を墓石に使わないようおすすめしています。
理由はシンプルで、失敗したときの修復が難しいからです。
墓石の艶が落ちたり文字が欠けたりすると、石材店による再研磨や文字の補修が必要になり、費用も掛かります。
汚れを楽に落とすための代償としては大きすぎます。
高圧洗浄機専門店のヒダカショップも、霊園では電源を確保しにくいことに加え、石種や経年劣化、彫刻の状態を判断するには専門知識が要るとして、無理に高圧洗浄機を使わず石材店へ相談するよう案内しています。
売る側も慎重な使用を求めている道具です。
プロの高圧洗浄と自分でやるのは前提が違う
「業者は高圧洗浄でクリーニングしているのに、なぜ自分ではダメなのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
専門業者が高圧洗浄を採用する場合は、石の種類や劣化の程度、彫刻や目地の状態を確認し、水圧・ノズル・距離を調整しながら作業します。
新しく状態のよい御影石と、ひびや風化が進んだ古い墓石とでは、選ぶ方法が違います。
家庭用機の「強・弱」だけで安全性を判断するのは無理があります。
「石がその程度の水圧で壊れるはずがない」という意見も見かけます。
たしかに石そのものは頑丈です。
ただ、傷むのは石の塊だけではありません。
表面の磨き、彫刻、塗装された文字、目地などが先に傷むことがあります。
水道の給水圧は地域や建物で異なりますが、0.2〜0.4MPa程度の例があります。
対して、家庭用高圧洗浄機には常用吐出圧力が7MPa前後の機種もあります。
測定条件が違うため単純比較はできないものの、水道より桁違いに高い圧力です。
高圧洗浄機が墓石を傷める3つの理由
理由1:表面の研磨・コーティングが傷んで艶が落ちる
墓石の美しい光沢は、表面を丁寧に磨き上げた研磨仕上げによるものです。
コーティング加工が施されている墓石もあります。
高圧水を近距離から当てると、石種や劣化状態によっては表面が摩耗し、艶が曇るおそれがあります。
表面が荒れると汚れが付きやすくなり、その後の風化にも影響します。
ただし、吸水やコケの生えやすさは、石の種類、ひび、日当たり、湿度、周囲の樹木などにも左右されます。
艶が落ちたことだけで、すぐにコケが増えるわけではありません。
一度失われた艶は水洗いでは戻らず、再研磨が必要になる場合があります。
理由2:彫刻文字や細部が欠けるおそれがある
家名や戒名などの彫刻部分は、溝のふちが繊細です。
高圧水流が直撃すると、輪郭が崩れたり欠けたりすることがあります。
建立から年数が経ったお墓ほど、このリスクは高くなります。
ご先祖さまのお名前が欠けてしまったときの心の痛みは、修理費用の問題だけでは済まないはずです。
理由3:目地(接合部)の劣化を早める
一般的な墓石は複数の石材で構成されています。
その継ぎ目が「目地」です。
施工された時期や方法により、モルタル、石材用の弾性接着剤、コーキング材などが使われています。
劣化した目地へ高圧水を当てると、目地材が剥がれたり、傷みが進んだりするおそれがあります。
できた隙間から水が入れば、シミや石のズレにつながることもあります。
寒冷地では、入り込んだ水の凍結と融解も劣化の原因です。
しかも、目地の傷みは外から見ただけでは判断できない場合があります。
また、霊園では高圧洗浄機に必要な電源を確保しにくいうえ、洗浄時の水や汚れが隣の区画のお墓に飛び散ってしまう心配もあります。
ご近所のお墓への配慮という面でも、高圧洗浄は向いていません。
墓石を傷めにくい正しいお墓掃除の方法
用意する道具は「柔らかいもの」だけでいい
お墓掃除に特別な道具は必要ありません。
- 柔らかいスポンジ
- 毛先の柔らかい歯ブラシ(彫刻部分用)
- 雑巾やタオル(水拭き用と乾拭き用の2枚)
- 手桶・バケツ
- 軍手
たわし(特に金属製)や硬いブラシは、石の表面を傷付けるので使いません。
洗剤も原則不要です。
全国優良石材店の会(全優石)も、たわしと家庭用洗剤の使用を避け、スポンジでの水洗いを基本とするよう案内しています(参考:正しいお墓のクリーニング方法)。
どうしても洗剤を使いたい場合は、墓石用の商品を選び、石種への適合を確認してください。
まず墓石の裏側など目立たない場所で試し、表示どおりに薄めて、洗剤が残らないよう十分にすすぎます。
食器用や浴室用の洗剤には、酸・アルカリ、塩素系成分、研磨剤などを含む商品があります。
墓石との相性が悪ければ、変色やシミ、表面の傷みにつながるため使いません。
掃除の手順:水洗いで上から下へ
手順は次の通りです。
- ①まず合掌し、ご先祖さまにあいさつしてから始める
- ②墓石の上から水をかけ、スポンジで上から下へ洗う
- ③彫刻文字の溝は、毛先の柔らかい歯ブラシで優しくかき出す
- ④花立てや線香皿などの小物も洗う
- ⑤最後に乾いた布で水分をしっかり拭き取る
最後に水分を拭き取ると、水滴跡を残しにくくなります。
コケの発生は日当たりや湿度、周囲の樹木にも左右されるため、乾拭きだけで防げるわけではありません。
こびりついた汚れは、水を含ませてしばらくふやかしてから落とすのが基本です。
力とスピードで一気に落とす発想は、お墓掃除には向かないと私は考えています。
落ちない汚れはお墓クリーニングのプロに相談を
水洗いでどうしても落ちない水垢・コケ・シミは、無理せず石材店やお墓クリーニングの専門業者に相談してください。
墓石の施工・補修実績がある業者なら、石種や劣化状態を見ながら、損傷リスクを抑えた方法を選べます。
それでも、洗浄による影響をゼロにはできません。
汚れの種類や石の状態によっては、完全に落とせない場合もあります。
料金は作業範囲によってかなり変わります。
公開料金を見ると、本格清掃で1万円台から3万円台、石材店による専門クリーニングで7万円以上、研磨やリフォームを伴う場合は10万円以上という例もあります。
金額だけで比べず、使用する薬剤や施工方法、追加料金、損傷時の補償まで確認したうえで見積もりを取りましょう。
遠方でなかなかお参りに行けない方には、掃除とお参りを代行してくれるサービスもあります。
どこに相談すればよいか迷ったら、一般社団法人日本石材産業協会が「お墓ディレクター」という資格制度や相談窓口を設けていますので、参考にしてみてください。
大切なのは、無理なく続けられる形でお墓と関わることです。
よくある質問(FAQ)
Q. 水圧を「弱」にすればケルヒャーを使ってもいいですか?
おすすめしません。
家庭用高圧洗浄機には、弱い設定でも水道より数倍高い圧力が掛かる機種があります。
機種やノズル、墓石の状態によって条件が変わるため、「弱なら安全」とは判断できません。
使いたい事情がある場合は自己判断せず、まず霊園の管理者と石材店へ相談してください。
日常の掃除は手洗いが基本です。
Q. メラミンスポンジは墓石に使えますか?
メラミンスポンジには研磨作用があり、鏡面仕上げやコーティングされた墓石では艶を落とすおそれがあります。
こうした墓石には使わないでください。
仕上げが分からない場合も避けた方が安全です。
ふだんの掃除なら、柔らかいスポンジで足ります。
Q. お墓掃除はいつ・どのくらいの頻度でするのがいいですか?
お盆・お彼岸・命日・年末など、年に数回お参りする方は多くいます。
ただし、毎回しっかり磨く必要はありません。
落ち葉やほこりを払い、目立つ汚れだけを水拭きする程度で十分です。
古い墓石や、表面が粉っぽくなっている墓石、ひびや欠けがある墓石は、こするほど傷むことがあります。
掃除の頻度を増やすより、石材店に状態を見てもらってください。
Q. 隣のお墓に水や汚れが飛んでしまったらどうすればいいですか?
きれいな水で流し、拭き取れる範囲で拭き取りましょう。
心配な場合は霊園の管理事務所に一言伝えておくと安心です。
そもそも飛び散りやすい高圧洗浄を使わないことが、いちばんの予防になります。
まとめ
家庭用高圧洗浄機でのお墓掃除は、石種や劣化状態によって艶・彫刻・目地を傷めるおそれがあるため、おすすめできません。
日常的な汚れは、水と柔らかいスポンジを使った手洗いが基本です。
落ちない汚れは無理に削らず、石材店へ相談してください。
汚れの種類によっては、完全に落とせない場合もあります。
効率だけを考えれば、高圧洗浄機は魅力的な道具です。
ただ、ご先祖さまの碑を自分の手でゆっくり磨く時間は、それ自体が供養だと私は思っています。
この夏のお参りでは、手桶とスポンジを持って、じっくりお墓と向き合ってみてください。
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また、日本葬祭アカデミー教務研修室にて「葬祭カウンセラー」資格を取得し、エンディング領域における専門性を活かした取り組みを進めている。
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